看護師が不足する理由
毎年、およそ5万人が看護師の資格を取得して就職しています。
有資格者の数自体は、需要を満たしているのですが、そのうち3割が看護師として働いていない潜在看護師となっています。つまりは離職が多いのがナース不足の原因になっています。
日本における看護師不足の実態(PDF)を参考に、ナースが足りない原因について解説します。
7対1の看護配置の影響
2006年に診療報酬が改定され、入院患者7人に対して看護職員が1人という7対1の配置が推進されました。
10対1だった病院が7対1を取り入れると、100床あたり1億円も診療報酬が増えるのです。
そのため、病床数を減らしてまで対応する病院も出てきました。
この影響により、多くのスタッフが必要とされるようになりました。大病院が中小規模の病院から人材を引き抜くということも起こり、病院間の格差も出てきたのです。
人材を集めるために賃金を上げると、その他の人件費を抑えなくてはならなくなり、ナースが周辺業務を代行しなくてはならなくなります。
業務が増えると看護の質が低下し、労働日数も増え、過酷な職場から離職する看護職員が増えるという悪循環も起こっています。
介護福祉施設の需要
多くは病院で働くことを選択するため、介護施設でのナース不足はまだまだ解消されていません。
2025年には、4人に1人が75歳以上という超高齢化社会が待っています。この2025年問題に対応するには、多くの看護師が必要です。
200万人が必要という試算もあります。
減らない離職者
毎年5万人が新たに資格を取得しても、年間10万人以上が離職していてはナースが減るばかりです。
離職率を見てみると、病床規模が小さいほど高く、7対1看護配置の一般病棟は低くなっています。つまりは忙しい病院ほど高いということ。
結婚や妊娠・出産、子育てを離職理由として病院側も把握していますが、勤務時間の長さや夜勤の負担、休みが取れないことも大きな理由です。
病院は労働状況への不満を把握し切れていないという問題があります。
人員不足により仕事量が増え、休みも少なく、80%もの看護師が仕事を辞めたいと思いながら働いているのです。
また、都市部は転職先が多いため離職率が高くなっています。
潜在看護師の復帰
77.6%もの潜在看護師が再就職の意向を持っています。
既婚者の場合は多くが非常勤を希望していて、勤務時間の短縮や、有給休暇の取得などを望んでいます。
子育て中の場合は、院内保育の整備や、学童保育への配慮も求められています。
もうすぐ看護師が余る時代がやってくる
2006年当時、7対1病床は4万床程度になる予測されていました。ところが導入し36万床まで膨れ上がり、その結果医療費が高騰してしまいました。
政府は2014年4月の診療報酬改定で9万床分の削減に乗り出しました。
5月17日号の週刊ダイヤモンドでは、病院に勤務する看護師が14万人減り、訪問看護師が14万人必要になると試算しています。
病院への転職が難しい時代がもうすぐやってきます。働きやすい7対1の病院へ転職するなら今のうちかもしれません。
もしくは、今から訪問看護のスペシャリストを目指すというのも1つの選択肢です。